英語の動画を見せれば英語が身につく、とは言えません。一方で、動画がまったく役に立たないわけでもありません。動画が担えるのは「英語の音とリズムに慣れる」「興味の入口を作る」ところまでで、やり取りの経験は別に用意する必要があります。この線引きをはっきりさせてから使うと、期待外れになりません。

先に結論:動画は入口で、会話の代わりにはならない

幼児の英語について、当サイトは「英語力の先取り」より「親以外の人へ何かを伝えようとした経験」を先に置く立場をとっています。詳しくは幼児のオンライン英会話は意味がある?で説明しています。

この見方に立つと、動画の位置づけははっきりします。

  • 動画ができること:音に慣れる、繰り返しの言い回しを覚える、興味を持つきっかけになる
  • 動画ができないこと:相手の反応に合わせて言い換える、伝わらなかったときにやり直す

後者は、相手がいて初めて起きます。動画を何時間見ても、この部分は増えません。だからといって前者に価値がないわけではなく、順番の問題です。

「かけ流し」で起きること・起きないこと

英語を流しっぱなしにしておけば自然に身につく、という説明を見かけます。実際に起きやすいのは次のような状態です。

  • 音としては聞き慣れる。歌のメロディや決まり文句を口ずさむようになる
  • 意味が分からないまま流れている時間が長いと、意識が向かなくなる
  • 好きな作品なら繰り返し見て、場面と結びついた言い回しだけ覚える

つまり、聞き流しの総時間より、子どもがその場面に注意を向けていたかどうかが効きます。ながら再生の時間を増やすことは、この点であまり意味がありません。

動画が担える三つの役割

1. 音とリズムに慣れる

日本語にない音の並びや強弱に、身構えずに触れられます。教材として構える必要はなく、好きな作品で構いません。

2. 繰り返し見る作品で言い回しごと覚える

同じ作品を何度も見たがるのは、幼児期にはよくあることです。英語の学習という面では、この繰り返しが働きます。場面と音がセットで残るためです。作品数を増やすより、気に入った一本を繰り返すほうが向いています。

3. 興味の入口になる

好きなキャラクターが話す言葉、という入口は強く働きます。ここで生まれた関心を、あとから人とのやり取りにつなげます。

文部科学省の幼稚園教育要領は、幼児期の教育を環境を通して行うものとし、興味や関心に基づく主体的な活動を重んじています。動画も、与える教材ではなく環境の一つとして置くと扱いやすくなります。

効果を分けるのは、見たあとの十秒

同じ動画を見ても、あとに残るかどうかは周りの関わりで変わります。難しいことをする必要はありません。

  • 「今の、なんて言ってた?」と日本語で聞く
  • 出てきた動作をその場で一緒にやってみる
  • 気に入った一言だけを、その日の生活の中で使ってみる

保護者が英語を話せる必要はありません。日本語で聞き返すだけでも、子どもは「意味があるものとして聞く」姿勢に変わります。逆に、見ているあいだ一度も言葉が交わされないと、背景の音として流れていきます。

英語音声に切り替えるときにつまずくところ

日本語で見慣れた作品を英語音声に変えると、たいてい抵抗されます。

  • すでに内容を知っている作品から始める(筋が分かるので不安が小さい)
  • 最初は短い一話、または好きな一場面だけにする
  • 嫌がったら日本語へ戻す。押し切らない

「英語じゃないと見せない」という条件をつけると、作品ごと嫌いになることがあります。英語を嫌いにさせないことのほうが、この時期は優先されます。

視聴時間をどう決めるか

英語のためという理由があっても、視聴時間の考え方は変わりません。

  • 一日の合計時間を先に決め、英語の分もその中に入れる
  • 食事中と就寝前は避ける
  • 終わりの時間を、始める前に伝えておく

こども家庭庁の幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョンは、生活のリズムや遊びを通じた育ちを基本に置いています。英語を理由に生活の枠を広げると、寝つきや翌日の機嫌に返ってきます。時間を増やすより、見たあとの関わりを増やすほうが効きます。

視聴後に切り替えられず不機嫌が続くなら、その使い方は合っていません。終わり方を変えるか、いったん止めます。

サービスを比べるときに見る項目

英語のために動画配信サービスを使うなら、作品数より次の項目を先に確認します。

見る項目確認すること
英語音声の有無見せたい作品が英語音声に切り替えられるか。全作品ではないことがある
字幕英語字幕を出せるか。保護者が内容を確認するのに使える
子ども向けの制限子ども用プロフィールや視聴制限を設定できるか
オフライン再生移動中に使うなら必要。通信量の心配が減る
同時視聴とプラン家族で使う台数。プランによって画質と台数が変わる
解約条件月額か年額か、途中でやめられるか

作品数が多いことより、見せたい数本が英語音声に対応しているかが実際の使い勝手を決めます。契約前に、その作品の対応状況を公式サイトで確認してください。

料金は月額でも年間では固定費になります。習い事や教材と合わせた家庭全体の負担は費用と家計・送迎の計画で試算できます。

動画が合わない場合

次のような様子が続くなら、動画中心の形は向いていません。

  • 画面が終わると毎回崩れ、切り替えに時間がかかる
  • 見ているあいだ、声も動きも出ない状態が続く
  • 見せる時間を減らすと強く要求し、生活の予定が動画中心になる

この場合は、絵本、歌、体を動かす遊び、対面の活動へ替えます。英語以外も含めて候補を探すなら性格別・習い事おすすめ診断を使ってください。人と関わる経験そのものを増やしたい場合は社会性を育てる場所の違いが参考になります。

今日の次の一歩

まず、お子さんがすでに繰り返し見ている作品を一本挙げてください。その作品が英語音声に対応しているかを確認し、対応していれば一場面だけ英語で見てみます。新しい教材を増やす前に、今ある好きなものを使うほうが続きます。

参考資料